結構時間が経っている

 結構時間が経っている計算になる。焼酎の酔いがいつの間にか俺を襲い、少しの間寝ていたのかも知れない、きちんと寝なければ体調を崩す事になる。そう思ってビデオとテレビの電源を消そうとしたのだが、手に届くのは競馬新聞に印をする赤色をしたペンで、その先に置いたリモコンには手が届かなかった。

――『得意な仕事』――

 そして気が付いた時は朝になっていた。テレビはビデオテープが終わっていて朝のニュース番組を放送していた。俺は砂嵐を見ることなく、熟睡していたのだ。それに気がついてみると、俺は敷布団の下にもぐりこむようにして寝ていた。

 その敷布団から這いずり出るように起き上がると、エアコンが効き過ぎたのか、それともたんなる飲みすぎなのか、少し頭が痛かった。ふらつく足でキッチンに向かい、鏡の前で自分の顔を見た。眼はかなり充血していて、目玉の血管が浮いているような感じに見える、そのまま顔を洗い、歯を磨いてから再び鏡を見た。

 鏡に映る自分の姿の後ろに幻が見える。そんな気がしてきた。つまり俺の脳細胞がそう見えるように働いているのだ。その原因は原田だ。昨夜、原田が怖い話しを始めるからだ。いやそれを指示したのは篠塚だ。彼が何か悪巧みをしたに違いない。そういえば、あいつならこの部屋の鍵を持っている。ひょっとしてこの部屋に忍び込んで何か悪戯でもしたかも知れない…ゆっくりと後を振り返り部屋の中に続く。